訴訟
訴訟は、裁判所において、裁判官が法廷で双方の言い分を聴いたり証拠を調べたりして、最終的に判決によって紛争の解決を図る手続です。
以下、概要を記します。
訴訟の種類
訴訟には、民事訴訟(物の売買や金の貸し借りなど、主に民事上の紛争に関する訴訟)、人事訴訟(離婚や認知の訴えなど、主に家族関係についての紛争に関する訴訟)、行政訴訟(公権力の行使に当たる行政庁の行為の取消しを求める訴えなど、主に行政関係についての紛争に関する訴訟)等があります。
ここでは主に民事訴訟のうちの通常訴訟をもとにご説明します。
通常訴訟とは、個人間の法的な紛争、主に財産権に関する紛争の解決を求める訴訟です。
通常訴訟は、民事訴訟法に従って審理が行われます。
民事訴訟では、他に手形小切手訴訟(民事訴訟法の特別の規定によって審理される、手形・小切手金の支払を求める訴訟)や少額訴訟(簡易迅速な手続により、60万円以下の金銭の支払を求める訴訟)等があります。
訴訟の流れ
訴訟の開始から終了までは、おおむね以下のような流れです。
訴えの提起
↓
口頭弁論・争点及び証拠の整理手続
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証拠調べ(証人・当事者尋問等)
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判決・和解等
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判決に対する上訴(控訴・上告等)
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強制執行
記載は簡潔ですが、実際にはこのそれぞれの場面で沢山の主張・立証その他の作業が必要となり、書類も大量になり得ます。
期間も、被告(訴えを起こされた側の人)が出席しない、いわゆる欠席判決のような場合は、第1回期日で終了する可能性もありますが、被告側も反論等を述べて争う場合は、通常は第一審の手続だけで半年~1年、事件によってはそれ以上の時間がかかるケースもあります。
以下、各手続について簡潔に記します。
訴えの提起
訴えを提起するには、原告(訴えを起こす側の人)が、裁判所へ訴状を提出する必要があります。
訴状には、請求の趣旨や請求の原因を記載し、証拠資料も提出します。
また、訴えの金額に応じて、一定の収入印紙代や郵便切手代等も必要となります。
訴えを提起する際には、管轄(その裁判をどの裁判所が担当するか)も問題となり、法律の規定により、土地管轄(どこの地域の裁判所か)と事物管轄(簡易・地方・家庭・高等・最高裁判所のどの裁判所か)が決まります。
土地管轄は、原則として、被告の住所地を管轄する裁判所とされていますが、例外もあり、例えば不法行為に基づく損害賠償請求訴訟は、不法行為地を管轄する裁判所、不動産に関する訴訟では、問題となる不動産の所在地を管轄する裁判所でも良いとされています。
事物管轄は、原則として紛争の対象が140万円以下の事件は簡易裁判所、140万円を超える事件は地方裁判所でそれぞれ取り扱われるため、提訴先もそうなります。
訴状の審査等
裁判所は、提出された訴状を審査し、形式的に不備がなければ、口頭弁論期日を指定して、当事者を呼び出します。
訴状に不備があれば、原告に対して補正を命じ、その訴状等が被告へ送達されます。
口頭弁論
口頭弁論は、裁判官により開かれます。
裁判官は通常は1人または3人であり、最高裁判所では5人以上の場合もあります。
口頭弁論期日には、裁判長の指揮のもと、公開の法廷で手続が行われます。
原告や被告が出頭し、事前に裁判所に提出した準備書面に基づいて主張をし、その主張を裏付けるための証拠も提出することが要求されます。
その内容も、調停のような主張の自由度は薄まり、訴訟の場合は法律に則した主張・論理等が求められます。
被告が口頭弁論に欠席した場合、被告は答弁書等を提出して、原告の請求を争う意向を明らかにしていない限り、被告に不利な内容の判決が言い渡される可能性があります(したがって、裁判所から書類が届いた時は、必ず開封して中身を確認し、放置しないことが重要です)。
裁判長は、当事者の主張・立証に矛盾点や不明確な点がある場合には、質問をしたり、次の期日にその点を明らかにするよう準備することを命じることもできます。
争点及び証拠の整理手続
判断に必要な事実関係について、当事者間に争いがあり、争点や証拠の整理を行う必要がある事件については、裁判所は、証人尋問等の証拠調べを争点に絞って効率的かつ集中的に行えるように準備をするため、争点及び証拠の整理手続を実施することができます。
この手続としては、準備的口頭弁論、弁論準備手続、書面による準備手続の3種類があります。
裁判所は、事件の性質や内容に応じて、適切な手続を選択していきます。
証拠調べ
口頭弁論手続や、争点及び証拠の整理手続の中で、当事者間の争点が明らかになれば、裁判所はその争点について判断するため、書証の取調べ、証人尋問、当事者尋問等の証拠調べの手続を行います。
主張だけでは双方の言い分が食い違っていることも多く、証拠の有無・内容は非常に重要であり、裁判所の判断にも大きく影響します。
また、物などの証拠だけでなく、証言や本人の供述内容等も重要です。
証人尋問・当事者尋問の場面は、ドラマ等でそのシーンを見たことのある方も多いのではないでしょうか。
判決・和解等
双方が主張・立証を尽くし、証人や当事者の尋問等も終えた後、和解の見込みもなさそうであれば、裁判官によって判決が作成・宣告されます。
判決は当事者双方に送達されます。
訴訟は、必ずしも判決のみによって終了するわけではなく、和解によって解決・終了することも、少なからずあります。
和解とは、当事者双方が互譲をすることにより、紛争を止めることを約する合意です。
和解は、訴訟の途中でいつでも行うことができます(ただし、通常は訴訟の序盤にはされにくいものです)。
和解により解決をした場合は、当事者の合意に基づくものであるため、内容がそれで確定し、通常は不服申立てはできません。
判決に対する上訴(控訴・上告等)
第一審の裁判所の判決がなされた場合、その内容に不服のある当事者は、判決送達日から2週間以内に上級裁判所に対して控訴をすることができます。
また、第二審(控訴審)の裁判所の判決に不服のある当事者は、上告をすることができます。
控訴については、原判決に不服のある当事者は、常に提起できます。
上告審が最高裁判所である場合には、上告は、原判決に憲法の解釈の誤りがあること、憲法の違反があること、その他一定の場合に限り、することができます。
いずれにしても、控訴、上告と進むごとに、狭き門になると言われています。
強制執行
当事者は、判決や和解の内容が遵守されない場合、判決書や和解の内容が記載された和解調書に基づき、強制執行を申し立てることができます。
当事者は、これによって、判決や和解の内容を実現することになります。
以上が訴訟の概要です。
訴訟は、裁判所における紛争解決の一手段であり、強制力を伴うこともあり、最後の選択肢ともいえるかもしれません。
訴訟の問題についても、お気軽にご相談ください。