賃貸借契約

 賃貸借は、当事者の一方が、相手にある物を貸し、それを使って利益を得させる代わりに、相手が賃料を払うことを約束する契約です。
 要するに有料で物の貸し借りをする契約であり、レンタルと言われるものです。
 具体例として身近なのは、土地や建物(不動産)、車(レンタカー)、機械等ですが、介護分野ではベッドや車いす等の賃貸借もあります。
 売買との大きな違いは、その物の所有権が相手に移ってしまわずに、貸主のもとに残る点です。
 また、借りたまさに「その物」を返さなければいけない点で、借りた物自体を消費してしまっても良く、同種同等の別の物を代わりに返せばそれで済む消費貸借とも異なります。
 更に、有償で貸す契約であるという点で、無償で貸す使用貸借契約とも区別されます。
 ここでは、民法上の賃貸借の規定について、簡潔に記します(なお、一定の借地や借家の場合には借地借家法の適用があり、こちらの記載内容とはまた異なる扱いがされるので、「借地」「借家」の各ページをご覧ください)。

存続期間

 賃貸借の存続期間は、50年を超えることができず、契約でこれより長い期間を定めた時でも、その期間は50年となります。
 契約の更新も可能ですが、その期間も更新の時から50年を超えることはできません。
 なお、物の処分権限のない人が以下の賃貸借をする場合には、それぞれの期間を超えることができず、契約でこれより長い期間を定めた時でも、その期間は各号に定める期間までとなります(いわゆる短期賃貸借)。
 ①樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年
 ②①以外の土地の賃貸借 5年
 ③建物の賃貸借 3年
 ④動産の賃貸借 6か月
 この期間は更新もできますが、その期間満了前、土地については1年以内、建物については3か月以内、動産については1か月以内に、その更新をしなければなりません。

不動産の賃貸借

 不動産の賃貸借は、登記をした時は、その不動産について物権を取得した人やその他の第三者に対抗することができます。
 また、登記のほか、借地借家法等の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合に、その不動産が譲渡された時は、その不動産の賃貸人の地位も、別途合意をしない限り、その譲受人に移転します。
 ただし、この賃貸人の地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができません。
 賃貸人たる地位が譲受人等に移転した時は、敷金の返還義務等は譲受人が引き継ぎます。
 なお、不動産の譲渡人が賃貸人である時は、その賃貸人の地位は、賃借人の承諾がなくとも、譲渡人と譲受人の合意によって、譲受人に移転させることができます。
 不動産の賃借人は、上記の対抗要件を備えた場合には、以下の場面で、いちいち賃貸人に頼まなくとも、自らそれぞれの請求をすることができます。
  ①その不動産の占有を第三者が妨害している時 その第三者に対する妨害の停止の請求
  ②その不動産を第三者が占有している時 その第三者に対する返還の請求

賃貸人の修繕義務

 賃貸人は、賃借人の責任で修繕が必要となった場合を除き、賃貸物の使用・収益に必要な修繕をする義務を負います。
 また、賃貸人が、賃貸物の保存に必要な行為をしようとする時は、賃借人は、これを拒むことができません。
 ただし、その保存行為のために、賃借人が、賃借をした目的を達成できなくなる時は、賃借人は、契約の解除をすることができます。
 賃借物の修繕が必要な場合、以下の時には、賃借人は、その修繕をすることができます。
  ①賃借人が、賃貸人に修繕が必要であることを通知し、または賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしない時。
  ②急迫の事情がある時。

賃借物にかかる費用

 賃借人は、契約またはその目的物の性質によって定められた用法に従い、物の使用・収益をしなければなりません。
 賃借人は、賃借物について、賃貸人が負担をするべき必要な費用を支出した時は、賃貸人に対して、直ちにその償還を請求することができます。
 賃借人が、賃借物について、有益な費用を支出した時は、賃貸人は、賃貸借の終了の時に一定の金額を償還しなければなりませんが、裁判所は、賃貸人の請求によって、その償還について、相当の期限を与えることができます。

賃料

 賃料は、動産、建物、宅地の場合は、毎月末に、その他の土地の場合は、毎年末に、それぞれ支払わなければなりません(収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければなりません)。
 耕作または牧畜を目的とする土地の賃借人は、不可抗力によって賃料より少ない収益しか得られなかった時は、その収益の額に至るまで、賃料の減額を請求することができます。
 この場合、その賃借人は、不可抗力によって引き続き2年以上賃料より少ない収益しか得られなかった時は、契約の解除もできます。
 また、賃借物の一部が、賃借人に責任のない事情によって使用・収益ができなくなった時は、賃借人は、その部分の割合に応じて、賃料が減額されます。
 この場合に、残存する部分のみでは、賃借人が賃借をした目的を達することができない時は、賃借人は、契約を解除することもできます。

賃借権の譲渡・転貸

 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲り渡したり賃借物を転貸したりすることはできません。
 賃借人が、これに違反して第三者に賃借物の使用や収益をさせた時は、賃貸人は、契約を解除することができます。
 賃借人が、適法に賃借物を転貸した時は、転借人は賃貸人に対して、直接に義務を負います。

賃貸借の終了

 借主は、契約に定めた時期に、借用物を返還しなければなりません。
 当事者が、賃貸借の期間を定めなかった時は、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができます(ただし、収穫の季節がある土地の賃貸借の場合は、その季節の後、次の耕作に着手する前に、解約の申し入れをしなければなりません)。
 この場合には、土地の賃貸借の場合は、解約申し入れから1年、建物の賃貸借の場合は、解約申し入れから3か月、動産・貸席の賃貸借の場合は、解約申し入れから1日の経過によって、それぞれ終了します。
 この規定は、当事者が、賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方が、その期間内に解約をする権利を定めておいた時は、同様に適用されます。
 賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみ、その効力を生じ、過去には遡りません。
 この場合、損害賠償の請求は妨げられません。
 賃借人は、賃借物を受け取った後、これに生じた損傷(通常の使用・収益によって生じた賃借物の損耗や、賃借物の経年変化は除きます。)がある場合、賃貸借が終了した時は、その損傷が賃借人の責任で生じたわけではない場合を除いて、原状に回復する義務を負います。

賃貸借の更新

 賃貸借の期間が満了した後、賃借人が賃借物の使用・収益を継続する場合に、賃貸人がこれを知りながら異議を述べない時は、それまでの賃貸借と同一の条件で、更に賃貸借をしたものと推定されます。
 この場合、各当事者は、上記の規定によって解約の申し入れをすることができます。
 賃貸人は、もし敷金を受け取っている場合、以下の時は、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の金銭支払義務の額を控除し、その残額を返還しなければなりません。
  ①賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けた時。
  ②賃借人が適法に賃借権を譲り渡した時。
 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭支払義務を履行しない時は、敷金をその債務の弁済に充てることができます。
 この場合、賃借人からは、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てるようにと請求することができません。

 民法上の賃貸借については、おおむね以上の通り定められています。
 冒頭に記載した通り、借地借家法の適用のある土地や建物の賃貸借契約については、そちらの規定によりますが、そうでないものは、こちらの民法の規定に従うことになります。

 賃貸借の問題についても、お気軽にご相談ください。