破産

 破産とは、人や法人(会社等)が多額の債務(借金等を返す義務)を負っていて、支払ができない状態にあること等を裁判所に申告し、裁判所の関与のもとで清算・免責をしてもらう手続です。
 民事再生任意整理等と並ぶ、債務整理の選択肢の一つです。
 以下、概要について簡潔に記載します。

破産制度の趣旨

 裁判所で破産の手続をとり、それが最終的に認められると、本人の財産がなかったり、あっても債務を全額支払うには足りなかったりして、払いきれずに残ってしまう分については、自然人の場合の税金などを除いて、原則として払う義務はなくなります。
 これは、債権者から見たらとんでもないことだと思うかも知れません。
 しかし、債務を払えなくなる事情は人によって様々で、例えば景気の影響を受けて事業がうまくいかなくなったり、会社をクビにされたりしたために払えなくなるということは、誰にでも起こりうることです。
 また、景気に関係なく、事業等に失敗は付きものです。
 そのような場合に、債務者に一生払い続けるよう義務を負わせるのは、その人の人生があまりに過酷になりかねません。
 そのため、破産の申立てが適法にされた場合には、裁判所の関与のもとで、債務者に残っている財産から債権者に一定の支払を公平に受けさせると共に(支払が全く受けられない場合もあります)、債務者本人に悪質な事情がない限りは、その人にもう一度経済的にやり直すチャンスを与えようというのが、破産制度の趣旨です。

手続の流れ

 個人(自然人)の破産で、特段のめぼしい財産も悪質な事情もない場合は、同時廃止という手続となります。
 その場合の大まかな手続の流れとしては、以下の通りです。

  ①書類を整えて、債務者本人の住所地を管轄する地方裁判所へ破産を申し立てる。
   ↓
  ②裁判所から求められれば、説明を補充したり、追加の資料を提出したりする。
   ↓
  ③裁判所が、破産手続開始決定・同時廃止決定(財産がないため、債権者への配当手続はしないという決定)を出す(「債務者」→「破産者」となる)。
   ↓
  ④裁判所が、債権者の意見も聞いて、破産者の免責を認めるかどうかを検討する。
   ↓
  ⑤裁判所が、免責を相当と判断すれば、免責許可決定を出す。
   ↓
  ⑥決定が確定して、破産者本人が復権する。

 このような同時廃止事件の手続の期間は、おおむね3ヶ月~半年位です。

 他方、債務者本人に一定以上の財産があったり、財産隠し等の悪質な事実の存在が疑われたりする場合には、同時廃止決定はなされず、裁判所が破産管財人(本人の財産の有無や悪質な事情を調査したり、本人の持つ財産を回収してお金に換えたりして、債権者に対し、公正・公平に分配する職務を負う人。破産者の代理人ではありません)を選任し、その破産管財人が財産の調査・回収を行ったり、回収した財産の状況等を裁判所で債権者に報告する期日が開かれたり、債権者への配当が行われたりします(破産管財事件)。
 その後に、免責の手続となります。

 以上は自然人の場合ですが、会社等の法人が破産をする場合は同時廃止にはならず、管財事件として破産管財人が選任され、手続が進みます。
 法人の場合は自然人の場合と違って、その後の生活の再建を考える必要がないので、財産はすべて残らず処分され、配当ができるだけの金額があれば配当がされて解散となります。
 免責手続もありません。

 個人・法人を問わず、管財事件となる場合には、負債の金額や債権者の数、その他事件の規模の大きさ等により、数十万円~数百万円の予納金を裁判所に納める必要があり(これは管財人による調査、財産処分、その他の事務処理等に充てられる費用であり、破産を依頼する弁護士への弁護士費用とは別に用意をしなければなりません)、期間も1年以上かかる場合もあります。
 また、法人が破産をする場合には、その法人の代表者等も連帯保証人となっていることが通常ですから、その人も一緒に破産等の手続をとる必要があり得ます(この場合、その代表者等についても弁護士費用と予納金の双方が必要となってくるため、その用意が必要となります)。

 以上が破産手続の主な流れです。
 以下では、破産に関して質問されることの多い点を簡潔に記載します。

持っている財産について

 破産手続は、簡単に言えば、今持っている財産から最大限の額を債権者に払い、それでも払えない分は免除してもらうという手続です。
 したがって、それなりの財産を持っている場合には、それらを処分して支払に充てなければなりません。
 例えば、一定の価値のある不動産や自動車その他の動産、預貯金、生命保険等のある場合には、基本的にそれらを手放さなければなりません。
 とはいえ、破産をした後の生活のこともありますので、最低限のお金や必要不可欠な一定の家財道具等は残してもらえます(ただし、法人破産の場合はすべて処分されます)。
 また、破産の後に得た収入や財産は、基本的には支払に充てる必要はなく、その使い道は本人の自由です。

破産をしたことを他人に知られるか

 債権者に対しては、破産の通知が全員に送られますので、知られてしまい、隠すことはできません。
 破産をしたことは官報で公告されますが、一般の人はほとんど官報を見ていないので、例えば近所の人や友人等がそれを見て知ることはまずないとは思われます(ただし、自宅を手放す必要等から、間接的に知られることはあり得ます)。
 勤務先に対しては、知られることは通常ないとは思われますが、勤務先にも借金等があってそこも債権者となるような場合は、上記の通り通知を送らないといけないため、知られます。
 また、破産の手続の中で、退職金の資料等を会社から出してもらう必要のある場合等があり、そのような場合には怪しまれる可能性はあり得ます。
 ただ、仮に勤務先に知られた場合でも、破産を理由に解雇をすることは通常できません。
 家族へ秘密にすることも、必ずしも不可能というわけではありませんが、裁判所へ提出する書類を用意したり作成したりする上で、家族に関する書類が必要な場合もありますし、何かと協力をしてもらえた方が手続も円滑に進みやすいことは否定できないので、なるべく知っておいてもらった方が好ましいとはいえます。
 保証人がいる場合には、保証人にも原則として破産の通知が送られますし、主債務者が破産をすると、債権者から保証人に支払請求がされるため、保証人には知られることになります。

その他の留意点

 破産・免責が認められて確定した場合、後記の一定の債務を除き、残余の債務については支払う責任がなくなります。
 破産をしても、戸籍や住民票に記載されたり選挙権を失ったりはしません。
 パスポートも取得でき、海外旅行にも行けますし(ただし、破産手続中は、勝手に住所の移転等はできません)、子の就職や結婚等にも法的な障害はありません。

 他方、金融機関のブラックリストには登録され、おおよそ7年程度は(金融機関によっても違います)、借り入れやクレジットカードの作成等はできなくなります(銀行口座は作れます)。
 破産後、復権が認められるまでの間は、弁護士、公認会計士、司法書士、税理士、警備員等一定の仕事には就けず、取締役の場合も、民法653条2号によりいったん退任をすることになります(再任は可能です)。
 破産手続をとれば常に免責されるとは限らず、債権者から異議が出されたり裁判所が難色を示したりして、難航したり免責が許可されなかったりすることも、時にあり得ます。
 具体的には、浪費やギャンブル等により多額の借金を背負った場合や、財産を隠して破産の手続をしたり、裁判所に対して虚偽の主張や書類を提出したりなど、その行為態様が特に悪質な場合には、免責が許可されないこともあり得ます。
 また、過去に免責を受けたことがある人も、その後7年間は再度免責を受けることができません。
 免責が許可された場合でも、あらゆる債務が免除されるわけではなく、税金や、故意または重大な過失により人の生命・身体を害した場合の損害賠償義務、婚姻費用、養育費の支払義務等は免責されません。 

強制執行や訴訟

 裁判所に破産手続を申し立てて破産手続開始決定が出ると、以後は本人の財産について強制執行等はされなくなり、既にされている場合も原則として効力を失います。
 また、財産について既に訴訟等が起こされている場合でも、訴訟は中断します。

 以上が破産手続の概要です。
 お金がないから破産をするわけではありますが、現実には破産手続を取るにも費用がかかることから、完全にお金がなくなってしまってからでは難しく、早期に検討した方が良い場合もあります。

 破産の問題についても、お気軽にご相談ください。