株式・株主・株主総会
株式会社の主な機関として、株主(総会)、取締役(会)、監査役(会)が挙げられますが、株式会社では、株式を所有する人が株主であり、その株主が集って意思決定を行う機関が株主総会です。
主に会社法に規定されており、以下それぞれについて簡単に記します。
株式・株主
株式は、株式会社の社員(会社法では、社員とは従業員ではなく、出資者のことを指します)としての地位であり、これは原則として均一に細かく分けられています。
この「株式」を引き受けた人が「株主」です。
株主の責任は、引き受けた株式の価額の限度に限られます。
つまり、例えば100万円を払って、その分の株式を引き受けた人がいるとします。
その人は、将来その会社が多額の借金を抱えて倒産した場合でも、その借金まで支払う義務はなく、株式を引き受けた時に支払った100万円を諦めるだけで済むということです。
株主は、原則として、持っている株式の内容と数に応じて平等に扱われ、配当金をもらう権利や、解散時に残余財産の分配を受ける権利、株主総会での議決権等の権利を持っています。
「原則として」というのは、株式会社は、剰余金の配当、残余財産の分配、総会で議決権を行使できる事項、その他一定の事項について、異なる定めをした内容の異なる株式を発行することもできるからです。
会社は、株主名簿を作り、株主の住所・氏名等を記載して本店等に備えておかなければならず、株主や債権者は、原則として会社の営業時間内に、理由を示してそれを見ることができます。
株式は、他人に自由に譲渡できることが原則ですが、多数集めると強大な力を発揮するため、中小企業では、それが知らない人や好ましくない人などの手に渡ってしまわないよう、株式の譲渡をするには会社の承認が必要と定めていることが一般的です。
譲渡をした場合は、譲り受けた人の住所・氏名(名称)を株主名簿に記載しなければ、譲り受けたことを会社やその他の第三者に対抗できません。
そのため、例えばその間は原則として譲受人は配当金を払ってもらえませんし、二重に譲り受けた人が先に株主名簿に記載されれば、通常はその人が優先してしまいます。
なお、会社法では、株券(株式会社の社員としての地位(株式)をのせた証券)は不発行が原則となっていますが、もし定款の定めにより株券が発行されている場合には、譲渡にあたって株券も渡す必要があります。
譲渡制限のある株式の株主は、これを他人に譲り渡そうとする時は、その株式会社に対し、これを承認するかどうか決定するよう請求できます。
また、これはこの株式を取得した人からその株式会社に対しても請求できます。
この場合、会社はこれを承認するかどうかを決定しなければならず、承認しない決定をした時は、会社が自らその株式を買い取る必要があります。
株式会社は、株主との合意によって、その株式を有償で取得することもできますが、その場合はあらかじめ株主総会の決議によって、一定の事項を定めなければなりません。
これは、特定の株主から取得するものとすることもできます。
株式会社は、相続等によって株式を取得した人に対して、その株式を自社に売り渡すよう請求できる旨を定款で定めることもできます。
会社は、事業資金を調達したいと思ったような場合には、株主総会の決議等によって、新たに株式を発行し、株主その他の第三者にこれを引き受けてもらい、資金を集めることもできます(ただし、法的に可能というだけで、実際に引き受けてもらえるかどうかは別です)。
また、会社は、発行した株式の消却、併合、分割や、複数の株式ごとに一つの議決権を認めること(単元株制度)、新株予約権を発行すること等もできます。
新株予約権は、文字通り新しい株を予約する権利であり、一定の期間内に行使をすれば、その会社の一定の株式を取得できるという権利です。
取得できる金額が安く定められている場合、権利者は株価の上がった時に権利を行使すれば、取得金額と実際の株価との差額分だけ得をすることになります。
したがって、その内容によっては、引き受けたいという人も増えるので、会社にとっては資金を集めやすくなるわけです。
ただし、これらの手続は既存の株主に大きな影響を与えるため、会社は上記の手続や新株予約権の発行が法令等に違反したり、著しく不公正な方法で行われたりして、不利益の生じるおそれがある場合には、株主等から発行の差し止め等を請求されることがあります。
会社は、誰に対しても、株主としての権利の行使に関して財産的な利益を与えてはならず、これに違反すると刑罰に処せられます。
これは、例えば会社(経営陣)が、株主総会で有利な議決をしてもらう代わりに、株主にお金を払うような場合であり、昔のいわゆる「総会屋」が典型例です。
会社が特定の株主に、タダで、またはそれに近い条件で利益を与えた場合も、株主の権利の行使に関して行ったものと推定されます。
この利益を受けた人や関与した取締役等は、原則として、会社にその金額を返還・弁償する必要があります。
株主総会
株主総会は、株主が集まって開かれる総会で、会社法に定められた事項のほか、会社の組織、運営、管理、その他会社に関する一切の事項について、決議をすることができます(取締役会設置会社では、会社法・定款で定められた事項に限られます)。
株主は、出資者であり会社の所有者とみられるので、その人達の集まる総会には、このような強い権能が与えられています。
会社法で株主総会の決議が必要とされている事項については、定款によって取締役等に決めさせることもできません。
定時株主総会は、毎年、事業年度が終わった後の一定の時期に招集する必要がありますが、他にも必要があればいつでも招集できます。
開催をするのは原則として取締役ですが、一定の条件をみたす株主も、取締役に対する開催請求や、場合によっては裁判所の許可を得て自ら開催することができます。
開催にあたっては、株主に必要な情報を与えるため、原則として取締役から株主へ、一定期間内に招集通知を発する必要があります。
一定の株主は、取締役に対して、一定の事項を総会の目的とするよう請求したり、議案を提出したりすることもできます。
株主の議決権は、原則として1株につき1個ですが(上記の単元株制度を採用している場合は、1単元につき1個)、会社が持っている自社の株式(自己株式)については、議決権がありません。
総会で決議をするには、法律や定款の定めがある場合を除いて、原則として、行使できる議決権の過半数をもつ株主が出席した上、その議決権の過半数の賛成が必要です。
また、株式の併合、役員等の解任、資本金額の減少、通常の定款変更、事業譲渡、解散の決議その他の事項について決議をする場合には、そのための要件が重くなるほか、全株式について譲渡を制限する旨の定款変更や、その他一定の重要な事項について決議をする場合には、更に要件が重くなります。
総会は、議長が取り仕切り、議事の整理等をし、その命令に従わない人その他総会の秩序を乱す人を退場させることもできます(ただし、当然ながら、適切に進行させる必要があり、議長だから好き勝手に振る舞えるということではありません)。
取締役、会計参与、監査役、執行役は、総会で株主から特定の事項について説明を求められた場合は、一定の場合を除き、原則として必要な説明をしなければなりません。
株主総会は、議事録も作られて会社に一定期間備え置かれ、株主や債権者は会社にその閲覧や謄写等を請求することができます。
株主総会の決議は適正に行われる必要があり、もしその決議に瑕疵がある場合、以下の通り取消・無効・不存在とされることがあります。
まず、株主は、株主総会等の招集の手続や決議の方法が法令・定款に違反し、または著しく不公正な時や、決議内容が定款に違反する時、決議について特別の利害関係を有する人が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされた時などは、決議の取消の訴えを起こすことができます。
また、決議の内容が法令に違反する場合は、無効となります。
例えば、欠格事由に該当する取締役を選任する決議をした場合や、株主平等原則に反する配当決議をした場合、剰余金を違法に配当する決議をした場合等が考えられます。
このような内容の決議は初めから無効であり(上記のように後から取り消されて初めてなかったことになる場合とは異なります)、訴訟によらなくても無効であることを主張できますが、会社法にはこの場合に決議無効確認の訴えを起こせる旨も定められています。
こちらは株主に限られず、決議無効を確認する訴えの利益が認められる人であれば、いつでも誰でも訴えを提起することができます。
また、株主総会が開催されて決議がされたとは評価できない場合、不存在となります。
例えば、議事録では株主総会が開催されたとの記録があっても実際には開催されていない場合や、一部の株主だけが勝手に集合してそれを株主総会と称している場合や、招集通知の通知漏れが大量にあった場合等、株主総会の手続の瑕疵が甚だしく、もはや株主総会が開催されたとはいえない場合です。
この場合も決議無効確認の訴えと同様、そのような決議は初めから無効であり、訴訟によらなくても無効であることを主張できますが、会社法にはこの場合に決議不存在確認の訴えを起こせる旨が定められています。
こちらも、決議不存在を確認する訴えの利益が認められる人であれば、いつでも誰でも訴えを提起することができます。
このように取消・無効・不存在等にならないよう、株主総会の運営には慎重な配慮が必要といえます。
以上が株式、株主、株主総会の概要となります。
株式、株主、株主総会の問題についても、お気軽にご相談ください。