監査役

 株式会社の主な機関として、株主(総会)取締役(会)、監査役(会)が挙げられますが、監査役は、取締役らの業務執行が適正に行われているかどうかなどを監査する機関であり、いわばお目付役です。
 会社法上は、監査役は会社の役員とされています。
 株式会社と役員の関係は、従業員のような雇用(労働)契約ではなく、委任契約です。
 会社の種類等によって、監査役に対する規律もそれぞれ変わってくるため、一概には言えない部分もありますが、以下簡潔に記します。

 監査役は、定款に定めれば置くことができますが、取締役会設置会社や会計監査人設置会社では、原則として置かなければなりません。
 逆に、委員会設置会社では、監査役ではなく、会計監査人を置かなければなりませんし、大会社(資本金額が5億円以上、または負債額が200億円以上の会社)は、公開会社かどうかによっても違いますが、原則として、監査役会や会計監査人を置かなければなりません。

 取締役の場合と同様、法人や、一定の刑を言い渡されてまだその執行を終えていない・または執行を受けることがなくなった日から2年を経過していない人などは、監査役にはなれません。
 監査役会設置会社の場合は、監査役が3人以上必要で、そのうち半数以上は社外監査役でなければなりません。

 監査役は、株主総会の決議によって選任されます。
 任期は、原則として選任後約4年ですが、公開会社でない会社では、定款によって最長約10年程度まで伸ばすことも可能です。
 解任も、株主総会の決議で可能ですが、解任に正当な理由がない場合には、会社は、その監査役が受ける損害を賠償する必要があります。

 監査役は、いつでも、取締役や支配人その他の使用人(従業員等)に対して、事業の報告を求め、会社の業務や財産の状況を、調査することができます。
 監査役は、取締役が会社の目的外の行為をしたり、あるいはそのおそれがあったりして、そのせいで会社に著しい損害の生じるおそれがあるときは、その行為をやめるよう請求もできます。
 監査役の義務としては、監査報告を作ること、取締役が不正な行為をした時やそのおそれがある時、法令・定款違反の事実がある時などに、遅滞なく取締役(会)に報告すること、取締役会に出席して、必要があれば意見も述べること、取締役が株主総会に提出しようとする議案等を調査し、法令・定款違反等のあるときは、調査結果を株主総会に報告すること、等があります。
 監査役は、原則として、任務を怠って、会社や第三者に損害を生じさせたときは、その不注意の程度等に応じて、損害を賠償する義務を負いますが、会社に対する責任については、一定の条件のもとで、一部を免除したり、あらかじめ責任を限定しておいたりすることも可能です。
 なお、全監査役からなる監査役会の設置されている会社では、監査役会が、監査報告を作ったり、常勤監査役の選定・解職や監査方針等の決定等を行ったりします。
 監査役会の決議は、監査役の過半数で行い、議事録が作られて、会社の本店に備え置かれ、株主等は権利行使のために必要なとき等に、原則として、これを見ることができます。
 また、会社と取締役との間の訴訟では、監査役が会社を代表します。
 これは、取締役が会社を代表すると、取締役同士でなれ合って、不当な解決を図るおそれがあり、それを防ぐためです。
 
 監査役の報酬も、定款に定めていないときは、原則として、株主総会の決議で決めます。
 これは、取締役(会)が決めるとすると、監査役が萎縮をしてしまい、適切な監査を行うことができないおそれがあり、それを防ぐためです。

 他にも、会社の運営を監視する、監査役や監査役会と類似する機関としては、会計参与、会計監査人、監査等委員会等もあり、それぞれについて会社法には様々な規定がありますが、更に長くなるのでここでは割愛します。

 以上の通り、監査役は会社の運営が円滑になされるための重要な構成要素であり、就任する人はその職務等についてもよく把握をしておく必要があります。

 監査役の問題についても、お気軽にご相談ください。