被告人の弁護活動

 被告人の弁護について、ご説明します。

起訴後

 こちらに記載のように被疑者として捜査をされた後、検察官(検事・副検事)から起訴をされると、それ以降は法律上、被疑者ではなく、被告人と呼ばれます。
 起訴後も原則として、裁判所へ申請をして、外に出てもいいよという裁判(保釈)をもらえない限りは、警察署や拘置所等に身柄を拘束された状態が、続きます。
 保釈は、後の裁判で執行猶予判決が見込めそうな場合等は、認められることが多いですが、必ず認められるというわけではなく、最低150万円前後からの保釈保証金も、用意をする必要があります。
 これは、被告人が後の裁判へ出頭しなかったり、証拠隠滅行為を行ったり等、裁判所の定める条件に違反する行為をした場合に、没取され得るお金で、これによりそのような行為を戒める趣旨のものです。

公判

 裁判の当日は、検察官が、被告人がこんな犯罪をしたという証拠を、色々と裁判所に提出します。
 被告人は、犯罪をしたことが事実であり、それらの証拠も、自分の行った犯罪を正しく表していれば、その通りだと認めます。
 他方、被告人も、示談ができていれば示談書、弁償ができていれば領収証や振込証など、自分に有利な証拠を裁判所へ提出します。
 また、今後自分を監督してくれるという人に、法廷に出てもらって、そのような趣旨を証言してもらったり、自分でも法廷で更生の意欲等を述べてもらったりします。
 その上で、裁判所は、それらの資料を元に、判決をすることになります。
 こうして、自白事件の場合は、裁判も、おおむね3か月以内には終わります(ただし、犯罪をいくつも行っている場合は、その分手続も長くなります)。

 他方、否認事件の場合には、展開が変わります。
 検察官の提出する証拠には、通常は「この被疑者から被害を受けた」(被害者の言い分)とか「この被疑者がやったのを見た」(目撃者の言い分)などと書かれているので、被告人は、もしそれが事実と違うのであれば、捜査段階はもちろん、法廷においても、そのように主張をして、それらの証拠が採用されるのを、拒否しなければなりません。
 そうすると、調書は直ちには採用されず、被害者や目撃者を裁判所に呼んで、真実はどうなのかを話してもらい(尋問)、吟味をすることになります。
 このように争って、最終的に、裁判所が真実はどうなのかを判断し、判決を言い渡します。
 こうした否認事件の場合は、自白事件の場合よりも、裁判期間が長引くのが一般的です。
 なお、殺人罪や強盗致死罪等、一定の重大な事件の場合は、原則として、いわゆる裁判員裁判になります。

上訴

 もし、言い渡された判決に不満がある場合には、控訴・上告という手続により、判決のここがおかしいという主張を、していきます。
 この場合、上級の裁判所が、その主張の真否を判断します(が、上訴審で、第一審判決の内容が覆ることは、少ないのが実状です)。
 以上が、大まかな刑事事件の流れです。

弁護活動

 被疑者・被告人のための弁護活動としては、彼らの留置されている警察署へ面会に行き、事情を聴いて、今後の見込み等を説明したり、アドバイスをしたり、被疑者に有利な証拠を集めたり、被害者に弁償をして示談をしたり、これらの証拠を検察官に提示して、軽い処分を求めたりします。
 また、起訴をされて裁判になった場合にも、やはり同様に色々な説明・アドバイスをするほか、被告人に有利な証拠を集めて、裁判所に提出したり、今後の被告人の監督等をしてくれる人に、情状証人として裁判に出てもらったりなど、裁判の手助けをします。
 その他にも、手続を進めると同時に、被告人の身柄をなるべく早く解放してもらうための、保釈請求等の活動もします。
 時には、逮捕されるよりも前から、相談にのることもあります。

 「なぜ被疑者や被告人の弁護などするのか」「その必要はあるのか」と思う人も、いるかも知れません。
 しかし、本当に無実の人であれば、有罪となって刑罰を受けるいわれはないので、救われなければなりません。
 また、犯罪を行った人であっても、一応その人なりの言い分はあるのが通常で、その言い分も、最終的に通るかどうかは別として、適切に裁判所に伝える必要があります。
 更に、犯人であっても、実際に行った犯行の内容にそぐわない、不当に重い刑は受けるべきではなく、適正な刑罰でなければなりません。
 国家権力を背景に、広く捜査をして、証拠を集めることのできる警察や検察に対し、被疑者や被告人が、自分を守るために必要な活動を一人で行うのは(身柄を拘束されてしまえば特に)、非常に困難です。
 極端かもしれませんが、例えば、まったく身に覚えがないのに、逮捕をされて裁判にかけられ、周りの人は全員「お前がやったんだろう」と言っていて、自分の味方は一人もいないというような状況をご想像いただくと、それがどんなに恐ろしく、また心細いか、お分かりになるかと思います。
 そこで、憲法や刑事訴訟法では、適正な裁判が行われるようにするために、被疑者や被告人には誰しも、弁護人依頼権・選任権を保障しているのです。
 したがって、どんな被疑者・被告人であっても、弁護士の誰かは必ず、この弁護人の役目を果たさなければならず、必要不可欠な存在なのです。

 被告人の弁護活動についても、お気軽にご相談ください。