監護権
監護権は、父母の、未成年(18歳未満)の子に対する監護の権利(義務も含みます)であり、民法820条以下にその定めがあります。
以下、簡潔にご説明します。
監護権の内容
上記の条文は、「親権の効力」として規定されています。
すなわち、監護権は、通常は親権の中に含まれています。
したがって、父母の婚姻中は、親権者である父母が共同して監護権も行うことが通常です(父母の一方が親権を行うことができない時は、他の一方が行います)。
その内容として、民法上は例えば以下のような定めがあります。
・子は、親権者が指定した場所にその居所を定めなければならない(居所指定権)。
・親権を行う者は、子の監護・教育をするにあたっては、子の人格を尊重すると共に、その年齢や発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他、子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。
要するに、監護権とは、現実に子の世話等をする父または母の権利・義務です。
離婚の場合
父母が、協議や調停、訴訟等によって、離婚をすることになった時は、子の監護をすべき人やその他、子の監護について必要な事項も定められます。
協議や調停の場合は、話し合いで決まりますが、訴訟の場合には、裁判官がそれまでの監護状況や父母・子の意向、子の利益等、諸事情を考慮した上で、監護権者等を決定します。
親権者・監護権者は、離婚の成立まで実際に子の養育・監護を主に行っていた側に決定されることが多いほか、親権者と監護権者も通常は一致します。
ただし、親権者と監護権者とが別々と合意されるケースも時々あります。
この場合、通常は監護権者が子と一緒に住んで、生活をすることになります。
監護権者の変更
父母が別居中あるいは離婚後に、子の監護権者をそれまでとは別の一方に変更したいというような場合も、まずは父母の協議によって監護権者を決めます。
しかし、協議がうまくいかない時は、家庭裁判所に子の監護者の指定調停を申し立てることができます。
申立ての用紙は、家庭裁判所の窓口や裁判所のホームページ等に用意されています。
調停は、相手方も指定された期日に裁判所へ来れば、調停委員が双方当事者の話を交互に聴いて、話し合いがなるべくまとまるよう進めてくれます。
この場合、基本的には上記の親権者の決定・変更の場合等と同様、子の健全な成長を助けるような結論となるかどうかが重視されます。
そのため、申立人が監護者になることを希望する事情、親権者の意向、今までの養育状況、双方の経済力や家庭環境等のほか、子の福祉の観点から、子の年齢、性別、性格、就学の有無、生活環境等が考慮され、これらの点に関して事情を聴かれたり、資料等の提出が求められたりします。
そして、子の年齢にもよりますが、子の意向も尊重した取決めができるよう、話し合いが進められます。
話し合いの結果、合意ができれば調停成立となりますが、もし話し合いがまとまらずに決裂し、調停が不成立となった場合には、自動的に審判手続へと移行し、裁判官が、当事者の主張や提出された証拠、その他一切の事情を考慮して、審判を行います。
こうして、最終的には結論が出されます。
いずれにしても、上記の通り、「誰が監護権者となることが、子の健全な成長に一番良いか」が最も重要な要素かと思われます。
監護権の問題についても、お気軽にご相談ください。