未払賃金・残業代

 使用者から労働者に支払われる賃金については、労働基準法等の法令や判例によって、規律がされています。
 労働基準法上の基準以下の労働条件を契約で定めても、その部分は無効となります。
 また、労働契約法や労働組合法等も、労働関係上は重要な法律です。
 以下、使用者と労働者間の賃金に関する事項を、簡単にご説明します。

賃金

 賃金とは、労働基準法上、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対価として使用者が労働者に支払うすべてのものを指します。
 使用者は、労働者の国籍、信条、社会的身分、女性であることなどを理由として、賃金を差別することはできません。
 使用者は、労働契約を結ぶ際に、賃金について、書面で明らかにしなければならず、あらかじめ違約金を定めたり、損害賠償の金額を予定しておいたりすることもできません。  
 賃金の支払は、原則として、①通貨で、②労働者に直接、③全額(税金や社会保険料等の控除は可)を、④毎月最低一回以上(賞与等は除きます。⑤も同じ)、⑤一定の日を決めて、払わなければなりません。
 使用者は、賃金の支払にあたって、前借金など、労働することを条件として労働者に貸したお金を賃金と相殺したり、労働契約に付随して貯蓄の契約をさせたり、貯蓄金を管理する契約をしたりすることもできません。
 使用者は、労働者が出産、疾病、災害、その他の非常時の費用に充てるために請求する場合には、支払期日の前であっても、既に行った労働に対する賃金を支払わなければなりません。
 賃金は、あくまでも労働に対する報酬なので、欠勤、遅刻、ストライキ等の場合には、払う義務はありませんが、年次有給休暇、休業手当(会社の都合で働けない場合の手当)等の場合には、労働をしていなくても払われます。
 なお、休業手当については、使用者は、休業期間中その労働者に対し、その平均賃金(原則として、それを算定すべき事由の発生した日以前3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額)の100分の60以上の手当を支払わなければなりません。
 出来高払い制その他の請負制で使用する労働者に対しては、使用者は、労働時間に応じて一定額の賃金の保障をしなければなりません。
 労働者の死亡・退職の場合には、使用者は原則として、請求を受けてから7日以内に、賃金等を払い、積立金・保証金・貯蓄金その他名称のいかんを問わず、労働者の金品を返還しなければなりません。
 この場合、賃金や金品に関して争いのある場合には、使用者は、異議のない部分を期間中に支払い・返還しなければなりません。
 賃金の額については、最低賃金法によって、下限が定められています。

割増賃金

 使用者は、労働者に対し、原則として、休憩時間を除いて、1日8時間、1週間に合計40時間を超えて、労働をさせてはなりません。
 また、原則として、毎週少なくとも1回(4週間で4日以上)は、休日を与えなければなりません。
 これを超えると、いわゆる残業代の問題が出てきます。
 使用者は、この時間を超えて(時間外労働)、あるいは休日に労働(休日労働)をさせるには、労働組合等との間で、書面で協定を結ぶこと(労使協定=いわゆる36協定)等が必要です。
 また、労働基準法32条の2~32条の5にも、色々な例外の場合が規定されているので、使用者は注意が必要です。

 超過時間分または休日労働分については、通常の賃金の、25~50%の範囲内で割り増した賃金を、払わなければなりません(時間外労働が、1か月に60時間を超えた場合は、50%以上です)。
 午後10時以降の深夜に労働をさせた場合にも、やはり通常の25%以上を割り増した賃金を、払わなければなりません。
 時間外または休日労働が、深夜に及んだ場合は、それぞれのパーセンテージが合算されます(時間外労働と休日労働は、合算されません)。
 これらの割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当や通勤手当等の賃金は算入しません。
 年俸制の場合であっても、割増賃金の支払は必要です。
 なお、事業の監督・管理の地位にある人については、これら割増賃金等の規定は、適用されません(年次有給休暇の規定は、適用されます)。

賃金の切り下げ

 賃金の額も、いったん合意が成立して、有効に契約の内容となっている労働条件であり、労働者にとって重要なので、その切り下げには、本人の同意が必要であるのが原則です。
 ただ、本人の同意がなくとも、就業規則の変更や労働協約の改定等によって、切り下げが認められる場合もあります。
 この場合、
  ①不利益変更の必要性・合理性があるか、どの程度か(会社の経営状態が本当に良くないのか等)、
  ②不利益変更の内容、どの程度か(労働者の不利益はどの程度重大なのか等)、
  ③変更をするにあたって、適切な手続がとられたかどうか(労働組合等との間で、充分な交渉・検討、代償措置がなされたかどうか等)、
  ④同業他社の状況等、
その他の点を総合的に検討した上で、認められるかどうか、個別に判断されることになります。

 使用者としては、労働者に切り下げの理由を充分に説明するなど、労働者の合意が得られるように努める必要があるでしょう。

消滅時効

 未払賃金、残業代、退職金については、消滅時効期間は以下の通りであり、その期間が経過した後は、請求はできません。

  ①賃金 令和2年4月1日以降、当分の間は3年(いずれは5年)
  ②残業代 令和2年4月1日以降、当分の間は3年(いずれは5年)
  ③退職金 5年
  ④災害補償請求権 2年

 賃金の未払いは違法であり、これに反した場合、使用者は労働基準監督署から支払の勧告を受けたり、悪質な場合は刑事裁判で有罪とされたりすることもあります。
 賃金等の未払いについては、労働者・使用者間での交渉、労働審判、訴訟等の手続があります。
 このような場合には、労働契約書、給与明細、タイムカード、就業規則、労働協約等の各種証拠や、交渉経緯のメモ等が証拠となってきます。

 未払賃金・残業代の問題についても、お気軽にご相談ください。