商人・商行為

 ここでは、商法上の商人・商行為に関するルールを簡単に記載します。

 商法上「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする人をいいます。
 また、店舗その他これに類する設備によって物品を販売することを業とする人などは、商行為を行うことを業としない人でも商人とみなされます。

 商行為というのは、色々とありますが、利益を得て譲渡する意思をもってする動産・不動産・有価証券の有償取得またはその取得したものの譲渡を目的とする行為その他、商法501条~503条に規定された行為です。
 また、商人がその営業のためにする行為は、商行為とされますし、そもそも商人の行為は、その営業のためにするものと推定もされるので、営業のためにするものではないことを反証しない限り、基本的には商行為とみられます。

商人間の契約の申込・承諾

 対面や電話等ではなく離れた地にある商人間で、承諾の期間を定めずに契約の申し込みを受けた人が、相当の期間内に承諾の通知を発しなかった時は、その申し込みは効力を失います。
 ただし、承諾が遅延してなされた場合、申込者は遅延した承諾を新たな申し込みとみなすことができます。
 なお、商人が、日常的に取引をする相手から、その営業の部類に属する契約の申し込みを受けた場合は別で、この場合は遅滞なく承諾をするかどうかの通知を発しなければなりません。
 もし承諾するかどうかの通知を怠った時は、その商人は、その申し込みを承諾したものとみなされ、契約が有効に成立してしまいます。

商人間の売買

 商人間の売買で、買主がその目的物の受領を拒み、またはこれを受領できない時は、売主は、その者を供託し、または相当の期間を定めて催告をした後に、これを競売にかけることができます。
 この場合、売主がその者を供託し、または競売にかけた時は、遅滞なく、買主にその通知をしなければなりません。
 なお、損傷その他の事情による価格の低落のおそれがある物は、催告せずに競売にかけることができます。
 これらの競売にかけた時は、売主は、その代価を供託しなければなりませんが、その代価の全部または一部を売買代金に充当することも可能です。

 商人間の売買で、その性質または当事者の意思表示によって、特定の日時または一定の期間内に履行しないと契約をした目的を達成できない場合(定期売買といいます)に、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過した時は、相手方は直ちにその履行を請求した場合を除き、契約の解除をしたものとみなされます。

 商人間の売買では、買主は、その目的物を受領した時は、遅滞なくその物を検査しなければなりません。
 買主は、この検査により売買の目的物が種類、品質、数量に関して契約の内容に適合しないことを発見した時は、直ちに売主にその通知をしなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求、契約の解除をすることができなくなります。
 売買の目的物が、種類または品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちには発見できない場合には、買主は6か月以内にその不適合を発見した時も、同様に直ちに売主に通知をしなければ、上記各請求はできなくなります。
 ただし、これらの請求ができなくなる旨の規定は、売買の目的物が種類、品質、数量に関して契約の内容に適合しないことを売主自身が知っていた場合は、適用されません。

 買主が目的物を検査し、契約の解除をした時でも、買主は、売主の費用負担で売買の目的物を保管または供託しておかなければなりません(ただし、物の滅失または損傷のおそれがある時は、裁判所の許可を得てその物を競売にかけ、かつその代価を保管または供託しなければなりません)。
 この際は、買主は原則として遅滞なく売主に対し、その通知をしなければなりません。
 なお、これらは売主・買主の営業所(営業所がない場合は住所)が同一の市町村の区域内にある場合は適用されません。
 これらは、売主から買主に引き渡した物品が、注文した物品と異なる場合や、数量が注文した数量を超過している場合の、引き渡した物品または超過した部分の数量の物品についても、同様に扱われます。

寄託

 商人が、その営業の範囲内で寄託を受けた(物を預かった)場合は、報酬をもらわない時であっても、善良な管理者の注意をもって、寄託物を保管しなければなりません。

 旅館、飲食店、浴場その他の客の来集を目的とする場所(場屋)での取引を業とする人(場屋営業者)は、客から寄託を受けた物品の滅失または損傷については、不可抗力によるものであったことを証明しなければ、損害賠償責任を免れられません。
 客が寄託していない物品でも、その場屋の中に携帯した物品が、場屋営業者が注意を怠ったことで滅失または損傷した時は、場屋営業者は損害賠償責任を負います。
 客が場屋の中に携帯した物品について責任を負わない旨を表示した時でも、場屋営業者はこれらの責任を免れられません。
 貨幣、有価証券その他の高価品については、客がその種類・価額を通知して場屋営業者に寄託した場合を除き、場屋営業者は、その滅失または損傷によって生じた損害を賠償する責任は負いません。
 これらの場屋営業者の責任に関する債権は、場屋営業者が寄託を受けた物品を返還し、または客が場屋の中に携帯した物品を持ち去った時(全部滅失の場合は、客が場屋を去った時)から1年間行使しない時は、時効となり消滅します(ただし、場屋営業者が物品の滅失または損傷を知っていた時は、除かれます)。

その他

 数人の者が、その一人または全員のために商行為となる行為によって債務を負担した時は、その債務は特段合意をしていなくても当然に連帯債務となりますし、保証人がいる場合に、主債務が主債務者の商行為によって生じたものである時、または保証が商行為である時は、その保証は特段合意をしていなくても当然に連帯保証となります。

 商人は、その営業の範囲内で他人のために行為をした時は、特段報酬の合意をしていなくても、当然に適切な額の報酬を請求できます。
 商人間で金銭の消費貸借をした時は、貸主は特段利息の合意をしていなくても、当然に年3%の法定利息を請求できます。
 商人が、その営業の範囲内で他人のために金銭の立替をした時は、立替日以後の法定利息を請求できます。

 商行為によって生じた債務の履行場所が、その行為の性質や当事者の意思表示によって定まらない時は、特定物の引渡しは、行為時にその物が存在した場所で、その他の債務の履行は、債権者の現在の営業所(営業所がない場合は住所)で、それぞれしなければなりません。

 商人間で、その双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にある時は、債権者はその弁済を受けるまで、その債務者との間で商行為によって自分が占有するに至った債務者の所有物または有価証券を留置することができます。

 以上はあくまで商法上の商人・商行為に関してのさわりに過ぎず、商法には他の規定も多々含まれます。

 商人・商行為の問題についても、お気軽にご相談ください。