陳述書

 民事訴訟や人事訴訟等では、手続がだいぶ進行し、双方の主張や立証もおおむね出されて、あとは証人や当事者本人の尋問を残すのみという段階になると、裁判所から、陳述書の提出を求められることが通常です。
 陳述書というのは、簡単に言うと、ある人が、その事件に関して経験した事実や、認識・気持ち等を記載した書面で、その本人が署名・捺印をしたものです。
 これにより、裁判所や相手方は、その証人もしくは当事者が、その事件について、どのような事実が存在したと認識しているのか、尋問でどのような事を話すのか等を、相当程度把握することになります。
 要は、尋問の前準備のための書類であり、裁判所から陳述書の提出を求められると、訴訟が終盤に差し掛かってきていることが分かります。
 以下は、陳述書の簡単な一例であり、通常は時系列に沿って、その事件に関する出来事や、その人の認識等が記載されます。

                           陳述書
名古屋地方裁判所一宮支部 御中
1 私は、○年○月○日、○○という経緯により、Aさんと知り合いました。
2 その後、私とAさんは、○○という経緯により、○年○月○日、○○の契約をしました。
3 ところが、契約書を交わして、私はAさんに、契約の通りに商品を渡したにも関わらず、Aさんは、その後○○だと言って、代金を払ってくれません。
4 そこで、私は、○年○月○日、支払を求める通知書を、Aさんに内容証明郵便で送りましたが、返事はありません。
5 よって、今回の裁判に至りました。
  以上の通り、間違いありません。
○年○月○日
                          住所 ○○
                          氏名 ○○ 印

 これはあくまでこの記事のための簡単な例に過ぎず、事案の内容にもよりますが、実際の裁判では、もっと個々の事情・事実関係を具体的・詳細に記載して作成し、提出する必要があるでしょう。
 この陳述書は、訴訟の終盤に作成・提出をするものですが、その事件に関して起きた出来事を、時間の流れに従って、事前に記録して残しておくことは、後々の裁判等で役に立ちます。
 そのため、トラブルになりそうな場合や、なってしまった場合には、まずは客観的な証拠そのものを残しておくことが一番ですが、それと共に、このように事実関係を適切な時期に適切に記録しておくことも大切です。
 だいぶ時間が経ってから、いざ事実関係を思い出して作ろうと思っても、その時点では、細かい記憶がしっかりと残っていない(思い出せない)、ということもよくあるからです。
 そのような意味では、日々の出来事をリアルタイムに記した日記等も、役に立ちます。