不同意性交罪

 不同意性交罪は、以前は強姦罪、その後に強制性交罪として規定をされていた犯罪であり、刑法改正により、不同意性交罪となりました。
 刑法177条に規定されています。
 以下、簡潔に記します。

 不同意性交等罪は、以下のような行為または事由その他これらに類する行為または事由によって、被害者を、同意しない意思を形成し、表明し、もしくは全うすることが困難な状態にさせ、または被害者がその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交、膣もしくは肛門に身体の一部もしくは物を挿入する行為であって、わいせつなもの(性交等)をした場合に成立します。
 ①暴行もしくは脅迫を用いること、またはそれらを受けたこと。
 ②心身の障害を生じさせること、またはそれがあること。
 ③アルコールもしくは薬物を摂取させること、またはそれらの影響があること。
 ④睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること、またはその状態にあること。
 ⑤同意しない意思を形成し、表明し、または全うするいとまがないこと。
 ⑥予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、もしくは驚愕させること、またはその事態に直面して恐怖し、もしくは驚愕していること。
 ⑦虐待に起因する心理的反応を生じさせること、またはそれがあること。
 ⑧経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって、受ける不利益を憂慮させること、またはそれを憂慮していること。

 上記①~⑧は、不同意わいせつ罪と共通の要件です。
 なお、不同意性交「等」罪とあるのは、上記の通り必ずしも「性交」行為のみに限られず、それ以外の行為の場合も犯罪となり得るためです。

 被害者に対し、行為がわいせつなものではないと誤信をさせ、もしくは行為をする人について人違いをさせ、または被害者がそれらの誤信もしくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした場合も、上記と同様に処罰されます。
 また、16歳未満の人に対し、性交等をした人(その16歳未満の人が13歳以上である場合は、その人が生まれた日より5年以上前の日に生まれた人、つまり5歳以上年上の人に限られます。)も、同様に処罰されます。

 不同意性交等罪は、婚姻している夫婦間であっても成立し得ます。
 法定刑は、5年以上の有期拘禁刑であり、有機拘禁刑の上限は20年なので、非常に重い犯罪です。

 刑法改正により、どのような場合にこの犯罪が成立するのかが上記のように細かく規定され、被害者の保護が強化されたとは思われます。
 他方で、細かく明記されたとはいっても、はたして同意があるのかどうかや、上記の①~⑧に当てはまるのかどうかや、具体的にはどの程度であれば当てはまるのか等々、一概には判断しがたいケースもないとは限らず、今後もそれらが論点として争いになることも予想はされますので、今後の実務の運用もみていく必要があるでしょう。

 不同意性交罪についても、ご不明な点はご相談ください。