自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)

 自動車を運転する際に必須の自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は、一般的には交通事故の際に問題となります。
 については、自動車損害賠償保障法により、以下の通り定められています。

 自動車は、自賠責保険または自動車損害賠償責任共済(自賠責共済)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはなりません。
 要するに、自賠責保険または共済に加入をしていなければ、原動機付自転車を含むすべての自動車を運転してはならないということであり、これに違反すると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
 自動車の運転は、危険を伴うものなので、このように法律で保険への加入が強制されているということです。

 自分のために自動車を運行(人や物を運送する・しないに関わらず、自動車を通常の用い方に従って用いること)の用に供する人は、その運行によって他人の生命または身体に損害を与えた時は、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。
 これは、運行供用者責任と言われるもので、必ずしも自動車の現実の運転者に限らず、所有者等も含まれ得ます。
 なお、①自分や運転者が、自動車の運行に関して注意を怠らなかったこと、②被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと、③自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったことを証明した時は、運行供用者責任は生じませんが、この③つのすべてを証明することは非常に困難であり、事故が起きた際には運行供用者責任はほぼ生じるものとされています。

 自賠責保険の内容は、人身事故による損害について支払われるにとどまり、物損事故は対象になりません。
 支払われる額は、死亡による損害については、被害者1名について、上限3000万円までであり、葬儀費、逸失利益、被害者や遺族の慰謝料等が支払われます。
 後遺障害による損害については、被害者1名について、上限4000万円までであり、障害の程度に応じて、逸失利益や慰謝料等が支払われます。
 傷害による損害については、被害者1名について、上限120万円までであり、治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料等が支払われます。

 被害者は、保険会社に対し、定められた保険金額の限度で、損害賠償額の支払を請求できます。
 また、被害者は、損害額の最終確定まで待つことが難しく、当面の生活費や治療費等が必要な場合等のため、保険会社に対し、仮渡金の支払を請求することもできます。
 これらの請求権は、差押が許されないほか、被害者またはその法定代理人が損害及び自動車の保有者(自動車の所有権その他自動車を使用する権利を有する人で、自分のために自動車を運行の用に供するもの)を知った時から3年で時効となり、消滅するので、注意が必要です。
 被害車両が、停止車両に追突をしたことによる事故等、100%被害者に責任のある場合は、相手車両の自賠責保険からは、支払を受けられません。
 加害者も、実際に自分が被害者へ損害賠償の支払をした後で、自分が支払をした限度においてのみ、保険会社に請求ができます。
 なお、重複契約の場合や、保険契約者または被保険者の悪意によって損害が生じた場合に限っては、保険会社は支払が免責されます(ただし、被害者は保護を受ける必要があるため、支払を受けられます)。

 実際には、自賠責保険からの支払だけでは、損害全額の回復に充分ではないことも多いものの、そもそも自賠責保険の加入は不可欠・強制です。
 任意保険は、この自賠責保険では足りない分の上乗せ・補充ということになります。
 自賠責保険に加入していない状態で、事故を起こした場合には、全額自腹で損害賠償を行うこととなる上、無保険運転は、上記のように刑事罰も科され、直ちに免許停止処分にもなります。
 自動車を運転する人は、いつ起こるとも分からない交通事故に備えて、自賠責保険への加入はもちろんのこと、その期限切れにも充分注意をする必要があります。

 自賠責保険の問題についても、お気軽にご相談ください。