任意整理
任意整理は、破産や民事再生等と並ぶ、債務整理の手続の一つです。
任意整理は、借金等の支払義務を負っている人(債務者)が、支払先(債権者)との間で、債務の減額等の整理を、裁判所を通さずに交渉をして行うものです。
具体的には、各債権者と交渉をして、無理のない範囲で払っていけるように新たな返済額や返済期間等を合意し直すことを目指します。
債権者が貸金業者の場合で、利息制限法の利率を超える利率で継続的に取引をしていた場合は、任意整理をすると、利息制限法の利率で計算をし直すこと(引き直し計算)により、借金の額を減らせたり、過払いになっている場合には、貸金業者に対して逆に払い過ぎたお金(過払金)を返すよう言えたりすることもあります。
また、債権者が貸金業者ではない場合も、計算をし直して支払額が減ったり過払いになったりすることはないものの、交渉によって債務を減額、あるいは利率を下げてもらえることなどがあります。
任意整理のメリット
任意整理のメリットは、以下のようなものです。
①破産や民事再生等の裁判所を通した債務整理手続の場合は、色々な書類を用意して裁判所へ提出したり、場合によっては裁判所に行って事情を説明したりしなければならず、その分時間も手間もかかりますが、任意整理の場合は、基本的にそのような必要はなく、裁判所を通さずに債権者と話し合いをするので、解決までの時間が短くなる場合があります。
②破産や民事再生では、一部の債権者だけを対象に手続を行うことはできず、基本的に債権者全員が手続の対象となるため、もし親族や勤務先等に債務のある場合には、これらの人達にも知られますし、住宅ローン会社や車のローン会社等に連絡が行くと、自宅が競売にかけられたり、自動車を引き渡さなければならなくなったりもするほか、連帯保証人を付けている債権者に連絡が行くと、連帯保証人に対して、残金を一括で払うよう請求が行くことになります。
しかし、任意整理であれば、例えば家や車だけは持ち続けたいとか、保証人に迷惑がかかるのは困るという場合には、それらの債権者は手続から除外して行うことができます(ただし、この場合は、除外した債権者に対しては今まで通りに払い続けていく必要があります)。
③任意整理では、破産と異なり、債務を負った原因は問わないので、ギャンブルや浪費等が原因の場合でも可能です。
④任意整理では、支払方法についても、比較的柔軟に決めることができ、具体的には債権者との話し合いによって計画を決めていくことになります。
そのため、例えば分割払いの回数を長くしたり、初回やボーナス月の支払を多くしたり、将来の利息は付けないでほしいというように、各自の希望を主張していくことも可能です。
⑤任意整理では、破産とは異なり、手続を行った場合に、特定の仕事(例えば、弁護士や税理士、警備員等)に就けなくなるといったことはありません。
任意整理のデメリット
任意整理のデメリットは、以下のようなものです。
①あくまで交渉に過ぎず、相手を合意に応じさせる強制力はありません。
債権者も、破産をされて全く回収できなくなるよりは・・・ということで、任意整理の交渉に応じてくれる可能性があるだけで、当然ながら希望すれば何でも聞き入れてくれるわけではなく、応じないと言い張られれば、それ以上は何ともできません。
現実的な返済計画を立てた上で、あくまで交渉次第ということになります。
実際には、毎月生活を切り詰めて借金の返済を続けていくのは大変ですし、途中で病気やケガ、失業等で収入がなくなったり、予定外の出費が生じたりすると、計画通りに返済ができなくなってしまうので(その場合はまた何らかの対処・手続を考える必要が生じます)、現実的には、やはり毎月無理のない金額で、数年程度で返していく計画を立てるのが通常です。
なお、任意整理は学生やアルバイトの人などでも可能ですが、このように何年にもわたって返していく以上、継続的な収入のあることが求められます。
②任意整理の相手が貸金業者等の場合、信用情報機関(いわゆるブラックリスト)に登録され、7年位は新規の借入やクレジットカードを作るのが困難になります。
なお、これ自体は、破産や再生でも同様ではあります。
任意整理の流れ
任意整理の大まかな流れは、
①弁護士へ依頼
②各債権者へ受任通知の送付(これを行うと、通常は業者の取り立て等が一時的に止まります)と、契約に関する情報・取引履歴等の開示請求
③債権者から送られた資料を元に、債務総額の確定
④返済計画の検討・作成
⑤債権者と交渉
⑥和解による合意
となります。
業者からの資料の開示状況や交渉の進展具合等にもよりますが、弁護士の受任から和解まで、おおむね半年以内には終わります(ただし、絶対ではありません)。
その後、各債権者に対して、月々の返済を始めることになります。
任意整理の注意点
任意整理において注意が必要なのは、
①負っている債務の種類が、借金かどうか(例えば、売買代金や建築の請負代金のような場合は、そもそも引き直し計算をする余地はないので、それによって金額が減ることもありません。ただし、交渉による減額の可能性はあり得ます。)
②借金であっても、利息制限法の利率を超えた利息の高いところから借りているのかどうか(この利率を超えていなければ、引き直し計算をしても金額は減りません)
③そのようなところから借りていても、貸し借りの期間が長いかどうか(短かったり、借りっぱなしで返していなかったりすれば、やはり引き直し計算をしても金額は減りません)
などの点です。
また、任意整理でも、債権者の意向により、現実には数年程度で返していく必要があることも多く、そもそも債務の総額が大きい場合には、月々の支払額が大きくてやはり払えない、ということもあり得ます。
この場合には、任意整理ではなく、最初から破産や再生等を選択するべきでしょう。
なお、任意整理でも、基本的に破産や再生と同様に、税金や社会保険料等の公的債務は対象となりません。
以上が任意整理の概要です。
任意整理の問題についても、お気軽にご相談ください。