養子縁組
養子縁組とは、実の親・実の子とは別に、新たに他人と養親・養子の関係を形成することです。
ただし、親子関係という重大な効果が生じるものである以上、無制限にできるわけではなく、様々な制限があります。
以下、簡潔にご説明します。
縁組の要件
20歳に達した人は、養子をすることができます。
尊属(父母や祖父母など)や年長者を養子とすることは、できません。
後見人が被後見人(未成年被後見人・成年被後見人)を養子とするには、家庭裁判所の許可が必要です。
配偶者のいる人が未成年者を養子とするには、配偶者と一緒にしなければなりません(ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合や、配偶者がその意思を表示することができない場合は、除きます)。
配偶者のいる人が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければなりません(ただし、配偶者と一緒に縁組をする場合や、配偶者がその意思を表示することができない場合は、除きます)。
養子となる人が15歳未満である時は、その法定代理人(親権者等)が、これに代わって、縁組を承諾することができます(養子となる人の父母で、その監護をするべき人が他にいる時は、その人の同意が必要です)。
未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可が必要です(ただし、自分または配偶者の直系卑属(子や孫など)を養子とする場合は、除きます)。
成年被後見人が縁組をするには、成年後見人の同意は不要です。
縁組は、戸籍法の定めるところに従い、届け出ることによって、その効力を生じます。
その届出は、当事者双方と、成年の証人2人以上が署名した書面で、またはこれらの者から口頭で、しなければなりません。
縁組の届出は、その縁組が、法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができません。
養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得します。
養子は、養親の氏(姓・名字)を用います(ただし、婚姻によって、氏を改めた人は、婚姻の際に定めた氏を用いる間は、除きます)。
縁組の無効・取消
縁組は、以下の場合には無効です。
①人違い、その他の事情によって、当事者間に縁組をする意思がない時
②当事者が、縁組の届出をしない時(ただし、その届出が、上記の当事者や証人の署名等の方式を欠いているだけの時は、縁組は有効です)。
養親が20歳未満である場合の縁組は、養親やその法定代理人から、その取消を、家庭裁判所に請求できます(ただし、養親が成年に達した後、6か月を経過するか追認(後から承認すること)をした時は、除きます)。
養子が尊属や年長者である場合の縁組は、各当事者やその親族から、その取消を家庭裁判所に請求できます。
後見人と被後見人との間で、家庭裁判所の許可なく行った縁組は、養子やその実方の親族から、その取消を家庭裁判所に請求できます(ただし、管理の計算が終わった後、養子が成年に達し、または行為能力を回復した後で、追認をするか6か月を経過した時は、除きます)。
配偶者の同意のない場合等の縁組は、縁組の同意をしていない人から、その取消を家庭裁判所に請求できます(ただし、その人が、縁組を知った後、6か月を経過するか追認をした時は、除きます)。
詐欺・強迫によって、縁組の同意をした配偶者は、その取消を家庭裁判所に請求できます(ただし、その人が、詐欺を発見し、もしくは強迫を免れた後、6か月を経過するか追認をした時は、除きます)。
子の監護をするべき人の同意のない場合等の縁組は、縁組の同意をしていない人から、その取消を家庭裁判所に請求できます(ただし、その人が、追認をした時、または養子が15歳に達した後、6か月を経過するか追認をした時は、除きます)。
養子が未成年者である場合に、家庭裁判所の許可なく行った縁組は、養子やその実方の親族、養子に代わって縁組の承諾をした人から、その取消を家庭裁判所に請求できます(ただし、養子が、成年に達した後、6か月を経過するか追認をした時は、除きます)。
詐欺・強迫によって、縁組をした人は、その縁組の取消を、家庭裁判所に請求することができます(ただし、当事者が詐欺を発見し、または強迫を免れた後、6か月を経過するか追認をした時は、取消権は消滅します)。
縁組の取消の効力は、将来に向かってのみ生じます。
縁組の時に、その取消の原因があることを知らなかった当事者が、縁組によって財産を得た時は、現に利益を受けている限度で、その返還をしなければなりません。
また、逆にそれを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならず、この場合に、相手方が善意であった時は、その損害を賠償する責任も負います。
養子は、縁組の取消によって、縁組前の氏(姓)に戻ります。
また、縁組の日から7年を経過した後に、縁組前の氏に戻った人は、取消の日から3か月以内に、戸籍法の定めに従い、届け出ることによって、取消の際に用いていた氏を用いることができます。
離縁
養親子関係を設定しても、その後に関係を解消したいという状況になることもあります。
そのような場合には、以下の通り、離縁の手続をとることになります。
協議離縁
まずは協議です。
縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができます。
養子が15歳未満の時は、その離縁は、養親と、養子の離縁後にその法定代理人となるべき人との協議で行います。
この場合に、養子の父母が離婚している時は、その協議で、その一方を、養子の離縁後にその親権者になるべき人として定めなければなりません。
縁組の当事者の一方が死亡した後に、生存している当事者が離縁をしようとする時は、家庭裁判所の許可を得て、これを行うことができます。
養親が夫婦である場合に、未成年者と離縁をするには、夫婦が一緒にしなければなりません(ただし、夫婦の一方がその意思を表示することができない時は、除きます)。
成年被後見人が離縁をするには、その成年後見人の同意は不要です。
離縁は、戸籍法の定めに従って届け出ることによって、その効力を生じます。
その届出は、当事者双方と、成年の証人2人以上が署名した書面で、またはこれらの者から口頭でしなければなりません。
詐欺・強迫によって離縁をした人は、その離縁の取消を家庭裁判所に請求できます。
この取消権は、当事者が、詐欺を発見し、もしくは強迫を免れた後、6箇月を経過するか追認をしたときは、消滅します。
離縁の届出は、その離縁が法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、役所は受理できません(ただし、これに反して受理された離縁も有効です)。
調停離縁
当事者間で協議がまとまらない時や、協議をしてもまとまらない時は、家庭裁判所へ、離縁の調停を申し立てることになります。
この場合、家庭裁判所で、調停委員が、当事者の双方から交互に事情を聴き、話がまとまるように調整をしてくれます(ただし、調停委員は、中立な立場であり、どちらかの味方というわけではありません)。
調停でも話がまとまらない時などは、家庭裁判所は、審判をすることもできますが、離縁の審判がされたとしても、養親または養子のいずれか一方から、2 週間以内に異議申し立てがなされると、その審判は無効になってしまうため、審判で解決することは少ないでしょう。
裁判離縁
調停で離縁が成立せず、審判にもならない場合には、裁判で離縁を認めてもらう方法があります。
縁組の当事者の一方は、以下の場合に限り、離縁の訴えを提起できます。
①他の一方から悪意で遺棄された時
②他の一方の生死が3年以上明らかでない時
③その他、縁組を継続しがたい重大な事情のある時
裁判所は、この①や②の事情がある場合であっても、一切の事情を考慮して、縁組の継続を相当と認める時は、離縁の請求を棄却することができます。
養子が15歳に達しない間は、養親と離縁の協議をする資格のある人から、またはその人に対して、離縁の訴えを提起することができます。
養子は、離縁によって、縁組前の氏に戻ります(ただし、配偶者と一緒に養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、除きます)。
縁組の日から7年を経過した後に、縁組前の氏に戻った人は、離縁の日から3箇月以内に、戸籍法の定めるところに従って届け出ることにより、離縁の際に用いていた氏を用いることができます。
以上は、通常の養子(いわゆる普通養子)の場合です。
普通養子は、子が他の人の養子になっても、実方との血族との親族関係は、法的には終了しません(例えば、相続等は発生します)。
特別養子
これに対し、子が養子縁組を行うと、実方の親族との関係が終了する特別養子という制度もあります。
特別養子縁組は、重大な効果を生じさせるため、基本的に家庭裁判所の関与が必要とされています。
家庭裁判所は、下記の一定の要件がある時は、養親となる人の請求によって、実方の血族との親族関係が終了する縁組(特別養子縁組)を成立させることができます。
養親となる人は、配偶者のいる人でなければなりません。
夫婦の一方は、他の一方が養親とならない時は、養親となることができません(ただし、夫婦の一方が、他の一方の嫡出子(特別養子縁組以外の縁組による養子は除きます)の養親となる場合は、除きます)。
25歳に達していない人は、養親になれません(ただし、養親となる夫婦の一方が25歳に達していない場合でも、その人が20歳に達している時は可能です)。
特別養子縁組の請求の時に、15歳に達している人は、養子にはなれません(ただし、養子となる人が15歳に達する前から引き続き養親となる人に監護されている場合で、15歳に達するまでに特別養子縁組の請求がされなかったことについて、やむを得ない事由がある場合は可能です)。
また、特別養子縁組が成立するまでに18歳に達した人も、養子にはなれません。
特別養子縁組の成立には、養子となる人の父母の同意が必要です(ただし、父母がその意思を表示できない場合や、父母による虐待、悪意の遺棄、その他養子となる人の利益を著しく害する事情がある場合は、除きます)。
特別養子縁組は、養子となる人に対する父母の監護が著しく困難・不適当であること、その他特別の事情がある場合に、子の利益のため特に必要があると認める時にこれを成立させるものとされています。
特別養子縁組を成立させるには、養親となる人が養子となる人を6か月以上の期間監護した状況を考慮しなければなりません。
この期間は、特別養子縁組の請求の時から起算します(ただし、その請求前の監護の状況が、明らかな時は除きます)。
養子と、実方の父母やその血族との親族関係は、特別養子縁組によって、原則として終了します。
特別養子の場合も、離縁をすることも可能です。
以下の二点に該当し、かつ養子の利益のため特に必要があると認める時は、家庭裁判所は、養子、実父母等の請求によって、特別養子縁組の当事者を離縁させることができます。
①養親による虐待、悪意の遺棄、その他養子の利益を著しく害する事情があること
②実父母が、相当の監護をすることができること
特別養子縁組の場合は、この場合にしか、離縁はできません。
養子と実父母やその血族との間では、離縁の日から、特別養子縁組によって終了した親族関係と同一の親族関係を生じます。
つまり、特別養子縁組前の元の親族関係に戻るということです。
以上が養子縁組制度の概要となります。
養子縁組の問題についても、お気軽にご相談ください。